コラム
2024/05/01「持続可能性」という言葉が叫ばれて久しい。1987年に、「環境と開発に関する世界委員会」が公表した「OurCommon Future」で用いられて以来、すでに40年という年月が過ぎ去ろうとしている。しかしながら、実現への道のりは、まだほど遠い。「持続可能性のPh.Dを持っているが、いまだに何かがよく分からない」と、学者の間でジョークが飛び交うほどである。 持続可能性は、実現可能なのか? このような疑問が抱かれる中、「スモール(Small)」の役割や意義が、再認識されるようになっている。
その代表が、『スモール・イズ・ビューティフル』(E・F・シューマッハー 1973年)だ。産業革命以降に機械化や効率化、大規模化を遂げている物質至上主義経済に警鐘を鳴らし、「大量生産より、大衆による生産」を唱えたことで、一躍世界のベストセラーとなった。 近年では、農業分野でも、大規模化・企業化する農業の対抗概念として「小農」が登場。漁業分野では、「漁業の未来は零細漁業にあり、大規模な船隊を取り除くことにある」や、「水面下の生命(SDGs14)を守るには、そのような生命と密接に関わり合う水面上の生命(人々、コミュニティ、小規模な家族経営体など)を守ることが必要不可欠である」と訴えられている。
では、なぜ持続可能性の実現に「スモール」の役割が注目されるのか? その理由は、きわめてシンプルだ。一つの環境や資源が破壊されるときに、真っ先にその被害を受けるのは、その環境や資源と共に生きる人々であり、それらの資源を守ろうとするインセンティブも、誰よりも高いからだ。
2009年に女性として初めてノーベル経済学賞を受賞したエリノア・オストロム氏も、「正しい解決策を求めようとするインセンティブが最も強い現場の人々より、行政や政治家のほうが問題解決をうまくできると信じる理由はない」との言葉を残している。「スモール」の果たす役割は、無視するには大きすぎる。(筆者は毎号交代します)
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