コラム
2022/08/01
2022年の4月から、成人年齢が18歳に引き下げられた。あなたは「今日から成人だ」といわれても、ピンと来ないかもしれない。そこで自然人類学の視点から成人とは何かについて考えてみたい。
子どもから大人になることの一つには、身体的に成長することが含まれる。ヒトの骨も、子どもから大人へと成長を遂げる。骨が長くなることで、身長が伸びる。骨の形が変わることで、大人らしい顔つきや体つきになる。親知らずは大学生のうちに生えそろうことが多い。皆さんが経験してきたとおりである。
思春期があることは、ヒトの特徴であるだろう。思春期に性的な成熟に達するが、骨格の発達は続くし、心理的に不安定になることもある。性成熟するとともに大人の仲間入りをするほかの霊長類と違って、ヒトはゆっくりと大人の仲間入りをする生活史をたどるのだ。
18歳から成人となると、支払いの上で自由が増えるメリットもある。しかし、社会的な責任が増すことには不安を感じるかもしれない。その不安な気持ちを切り替えるために、成人式がある。家族や友人に祝われることで、成人になったという自覚を促すことが、通過儀礼の役割の一つであろう。
昔の成人式に相当するものは何だったのか。縄文時代の古人骨には抜歯の風習が観察される。生前に歯を抜いていたために、歯の生えていた穴がふさがっている。ある時期には集団内のほとんどの個体が抜歯をしていたために、成人儀礼だと推測されている。
この抜歯風習が面白いのは、抜き方にパターンが見られるからである。下顎の前歯のうち、切歯を4本抜くパターンと、犬歯を2本抜くパターンがあるのだ。親族関係などを表していると考えられるが、まだ理由は定かではない。抜き方には、縄文時代の社会にまつわるヒントが隠されていると考えている。
現代のように麻酔はなく、抜歯する際はさぞ痛かったに違いない。縄文時代に生まれなくてよかったと、胸をなで下ろしている学生もいるだろう。(筆者は毎号交代します)
2024/11/01
スモール・イズ・ストロング
2024/10/01
サックスという趣味を続ける③
2024/09/01
学歴社会から専門性を重視する社会へ
2024/08/01
スモール・イズ・バルネラブル
2024/07/01
サックスという趣味を続ける②
2024/06/01
外国法を真に学ぶ方法と必要性
2024/05/01
スモール・イズ・ビューティーフル
2024/04/01
サックスという趣味を続ける①
2024/03/01
人生は長い旅路
2024/02/01
“違和感”が教えてくれたこと
2024/01/01
理科で学ぶ「条件制御」を日常に
2023/12/01
趣味のすゝめ
2023/11/01
海を渡ってブリコラージュ
2023/10/01
「推し本」を語り合うこと
2023/09/01
君たちはどう逃げるか
2023/08/01
「未来塾」で見る日本社会の「未来」
2023/07/01
「分かりやすさ」にご注意
2023/06/01
衣付けの楽しみ
2023/05/01
ぷらっと優しいつながりを
2023/04/01
AIが変える検索と教育の未来
2023/03/01
カウンセリングとアドボカシー
2023/02/01
骨にまで残る病気
2023/01/01
まず隗より始めよ②
2022/12/01
カウンセラーもがまださんと!
2022/11/01
骨に記録された食事
2022/10/01
まず隗より始めよ①
2022/09/01
面接室の外の心理療法
2022/07/01
活用なき学問は無学に等し
2022/06/01
模索の日々
2022/05/01
サメに食べられたヒト
2022/04/01
挑戦できない社会人を大量生産しないために
2022/03/01
コロナ禍で進むICT利活用、今後は?
2022/02/01
真夜中の争奪戦
2022/01/01
黒い雪
2021/12/01
思考の整理に便利なツール
2021/11/01
3年半を振り返って
2021/10/01
月明かりが生む闇のかたち
2021/09/01
アフターコロナの学びを考える
2021/08/01
分類学と博物館を巡る旅
2021/07/01
喘息と獣
2021/06/01
学ぼうと思ったきっかけ
2021/05/01
深海魚と私
2021/04/01
作品をみることは、自分自身をみること
2021/03/01
お題〈番外編〉 卒業を振り返る
2021/02/01
趣味を通して世界を広げる
2021/01/01
〈自分の意見〉を伝えること
2020/12/01
お題③ざんねんないきもの
2020/11/01
動物愛護とアニマルウェルフェア
2020/10/01
〈別れ〉と向き合う
2020/09/01
お題② 平均