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コラム

2024/09/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

学歴社会から専門性を重視する社会へ

法学部法律学科 内田 剛 准教授

日本は学歴社会といわれ、現在においても学歴は依然としてキャリア形成における重要な要素とされています。 日本での学歴評価の特徴として、特定の有名大学に進学したこと、すなわち「横の学歴の高さ」が非常に重視されます。一方、学位のレベル(学士、修士、博士)である「縦の学歴の高さ」はさほど重視されません。最近でも経済番組のキャスターが、専門とは無関係に有名大学卒であることを強調して紹介されているのを見て、なんとも残念な気持ちになりました。

 

いま私が研究のために滞在しているドイツは、「縦の学歴の高さ」重視の学歴社会といえます。たとえば、あるドイツの有名な研究者の肩書は、「Prof. Dr. Dr. h. c. mult.」(教授、博士、複数の名誉博士)となっています。これは極端な例ですが、専門知識を示すために多くの人が学位をその証明として表示します。

 

ニュース番組のコメンテーターや選挙演説のポスターなどで「Dr.」(博士)表示を頻繁に見かけます。ドイツ社会では、学位が専門家としての信頼性を高める重要な要素として認識されています。

 

一方で、日本では、「縦の学歴の高さ」を求めて大学院に進学する割合は、主要国の傾向に反して低下しています。さまざまな要因がありますが、学位が専門家の証明として受け入れられていない、社会において専門家として評価されないことも影響しているようです。日本では、縦の学歴が高いことが専門家としての信頼性を保証するものだという認識が薄いように感じられます。大学院への進学率の低下は、研究活動を推進し、高度な専門知識を伝播するという国の科学力を低下させることにつながりかねません。

 

この状況の改善には、学歴の価値を再評価し、専門家としての信頼性に目を向けるよう、認識を改めていくことが必要です。企業や社会全体が学位を持つ人々の専門性を正当に評価し、活用しようとする姿勢を持つことが重要なのではないでしょうか。学歴が単に大学のブランドを示すものではなく、専門家としての信頼性を示す証明となる社会を築くことで、日本の未来はより明るく、持続可能なものとなるでしょう。(筆者は毎号交代します)

内田剛(うちだつよし)

1979年沖縄県生まれ。博士(法学)。著書に『ファッションロー第2版(共著)』など。専門は法学(知的財産法)。2024年現在、ドイツのマックス・プランク イノベーション競争研究所で在外研究中。

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