コラム
2022/10/01
これまでの本稿では筆者が考える21世紀にふさわしい教育システムの開発や経営学の教育について、「知識集積から知識活用への革新」、さらに理論と実践を結びつける「体験型教育」として提案してきた。しかし、「言うは易く行うは難し」という日本のことわざにあるように、これは理想であり、現実性に乏しいという意見があるかもしれない。今号と1月号では、これまで提案してきた教育システムを当研究室でどのように実行しているかを紹介する。
私の専門分野である経営学は、実践と理論によって成り立つ学問である。言い換えれば、起業家などによって築かれた成功または失敗の体験を研究者はデータとみなし、分析し、再現性・法則性を見いだそうと試みる。実践者はいかにして新製品・新サービスを通じて社会課題を解決し、あるべき姿を実現するかを探るのに対し、経営学者は経営学の基盤をなす経済学、社会学、心理学のいずれかの観点から先行研究を網羅的に調べ、科学的に説明されていない現象や研究のギャップを見つけ、仮説・理論構築に努め、学問の発展に寄与する。
このように経営学は学際的で、決して単純な学問ではない。大学におけるさまざまな制約がある中、このサイクルをいかにして教えていくかが私の挑戦である。当研究室では、実践的な側面と学術的な側面からのアプローチにより、経営学の全体像を学んでもらうように設計している。前者では属するゼミ生を4つのチームに分けている。イベントのプラニング、調整、実行を担う「企画・実行チーム」、経営学者・起業家などへのインタビューを通じて経営学をわかりやすく発信する「知識創造チーム」、研究室の活動を撮影・編集して発信する「メディアチーム」、ロゴや告知ポスターなどイベントに必要なビジュアルのデザインを担当する「デザインチーム」である。
このチーム編成によって現代の企業で必要とされる基本的なスキルであるチーム力、コミュニケーション力、企画力、分析力、実行力、リーダーシップなどを、身をもって学んでもらう狙いである。1月号ではこれまでのアウトカムと後者について伝えたい。(筆者は毎号交代します)
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カウンセラーもがまださんと!
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骨に記録された食事
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面接室の外の心理療法
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歯の抜き方も好き好き?
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2022/06/01
模索の日々
2022/05/01
サメに食べられたヒト
2022/04/01
挑戦できない社会人を大量生産しないために
2022/03/01
コロナ禍で進むICT利活用、今後は?
2022/02/01
真夜中の争奪戦
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黒い雪
2021/12/01
思考の整理に便利なツール
2021/11/01
3年半を振り返って
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分類学と博物館を巡る旅
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喘息と獣
2021/06/01
学ぼうと思ったきっかけ
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深海魚と私
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趣味を通して世界を広げる
2021/01/01
〈自分の意見〉を伝えること
2020/12/01
お題③ざんねんないきもの
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