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コラム

2024/01/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

理科で学ぶ「条件制御」を日常に

児童教育学部児童教育学科 雲財 寛 講師

小学校第5学年では「条件制御」と呼ばれる理科の考え方を重点的に学ぶようになっている。条件制御とは複数ある条件の中から自分が調べたい条件だけを変えて残りを固定し、変えた条件が影響しているかどうかを調べる実験方法や思考法の総称である。

 

たとえば「電磁石のはたらきを大きくするには、どのようにすればよいか」という問いに対して、「コイルの巻き数を増やす」と「電流の大きさを大きくする」という2つの仮説を発想したとしよう。このとき、コイルの巻き数が電磁石に及ぼす影響を調べるためには、流す電流の大きさは変えずに、コイルの巻き数だけを変える実験を計画する必要がある。これが条件制御である。

 

このような実験を計画し実行することで、子どもは自身の仮説を検証するための方法論を学んでいる。言い換えると「自分の仮説を確からしくするための方法」を学んでいるといえる。つまり、理科では自然科学の知識を学ぶだけではなく、自然科学の知識を構築するための方法も学んでいる。

 

この条件制御という考え方はけっこう便利で、情報の信頼性を判断するための視点にもなる。たとえば「◯◯を食べるとやせた」という言説に遭遇したとしても「◯◯を食べなかった人と比較しないと効果は分からないのでは?」という発想を持つことができる。このように、条件制御は判断を留保するための視点を授けてくれる。

 

この条件制御の考え方をさらに日常生活に当てはめてみる。たとえば一度作ったことのある料理のレシピをアレンジしたい場合、「新しい食材を入れて、そのほかの食材の分量はそのままにする」というアプローチを取ることになる。このように「調べたい条件を変化させ、残りの条件を固定する」という視点で日々の生活を振り返ることで、今までに見えなかったものが見えてくるかもしれない。

 

もちろん、自然科学の思考法をさまざまな物事に過度に適用することで誤った判断をしてしまうおそれもあるので注意する必要がある。あくまで思考法の1つとして、楽しみながら実践することが大事だと思う。(筆者は毎号交代します)

雲財寛(うんざいひろし)

1990年香川県生まれ。広島大学教育学部卒、広島大学大学院教育学研究科修了。博士(教育学)。著書に『あなたの授業力はどのくらい?ーデキる教師の七つの指標(共訳)』など。

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