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コラム

2014/01/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

多様性の時代を生きる力

観光学部観光学科 本田量久 准教授

私たちは、自分が生きる日常世界に埋没し、それを自明視しがちである。しかし、ふと顔を上げて周囲を見渡すと、自分とは異なる他者とともにこの世界を紡ぎ出していることに気づかされる。国籍、人種・民族、世代、ジェンダー、文化、宗教、階層、身体的特徴など、一人ひとりが異なる条件を背負い、またそれぞれの個性を生かしながら生きている。この世界は無限の多様性に満たされている。

しかし、差異はしばしば衝突や対立を招くリスクを内在する。異質であるという理由だけで差別される人は少なくない。やはり異質性は共同性と矛盾するのだろうか。確かに相互理解は容易ではない。ましてや異質な他者を理解するのは難しい。異質な他者との共存可能性を問うのは素朴な理想主義であると批判されるかもしれない。

だが今日、私たちは流動性が高い時代を生きている。異質な存在を排除し、画一性を前提とする自己完結した閉鎖的なコミュニティーを想定すること自体が非現実的だろう。また、無知や不寛容に起因する偏見、自分が生きる世界を絶対視する偏狭な姿勢は、多様性の時代を生きる価値を破壊し得る。同質的な仲間と群れをなしている限りは安心感を得られるかもしれないが、未知の世界に触れることを回避している限りは新しい発見はないだろうし、人間的成長は期待できない。

逆説的だが、異質な他者との出会いは、新たな自分を発見する契機になる。その他者とのコミュニケーションを通じ、多様性で満たされた世界とのつながりと自分の唯一性を確認することができる。異質性に対する寛容性は、相互承認の連鎖反応を触発させ、多様性の共存を可能にする。

さらには、異質な他者のまなざしを通じてこそ、自分がそれまで看過してきた世界が多角的に見えてくるだろう。そして、それぞれ多様な知を融合させながら、時代の変化に柔軟に対応し得る新たな世界を構築する可能性が広がってくる。戦争、核危機、環境問題、貧困問題などのグローバルリスクが高まる流動性の時代にあって、この地球で異質な他者とともに生きる知恵を養っていくことは素朴な理想主義ではない、現実的な道ではなかろうか。

(筆者は毎号交代します)

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